11/18「アンリ神の手ゴールでフランスが本大会出場」
南アフリカW杯ヨーロッパ予選プレーオフ第2戦・フランス−アイルランドの103分、マルダのフリーキックが流れたところに走り込んだアンリがセンタリング、ギャラスが頭で合わせてフランスの同点ゴールとなった。
ゴールの直後、GKのギヴンをはじめとするアイルランドの選手が一斉に主審に抗議、そのジェスチャーはハンドのアピールだった。しかし主審はファウルを認めない。
結局得点は認められ、この得点が2戦合計の決勝点となり、フランスがW杯本大会出場、アイルランドは予選敗退となった。
11/18
試合後、フランス代表のドメネク監督はアンリのハンドに関し、「わたしには何も見えなかった」と語った上で、「アイルランド代表とそのファンたち、彼らのパフォーマンスに敬意をささげたい。アイルランドはW杯に行くに値した。本当に激しい戦いだった」と言うことで、秘めた気まずさを表現。「ロッカールームで、選手たちは喜びに沸いてはいなかった。それはアイルランドへの敬意のためだ。また、自分たちのプレーがよくなかったことを自覚しているからでもある」と続けた。
また、フランスサッカー協会(以下、FFF)のエスカレット会長は、「今日、わがチームはまひを起こしたようになり、プレーを築き展開させていくことができていなかったが、最も重要なものは手に入れた。こういう試合ではささいなことが勝敗を分ける。ここまでのフランスは多くの試合で運に恵まれていなかったが、今日だけは、われわれはラッキーだったと言える」と、安堵の気持ちを漏らした。
ドメネク監督はまた、今後のチーム作りについて聞かれ、「今はこの予選突破を味わいたい。12月までは、何も語るつもりはない」と返答。また、アイルランドの記者に「もしあなたのチームが、(アイルランドのように)このような形で敗れたらどう反応するかと聞かれた際には、「でも、実際にはそうではなかった」と言うにとどめた。
一方、アンリは試合後に「ハンドがあった」と率直に認め、「しかし、僕は審判ではない」と続けた。
「ボールが跳ね返って手に当たり、レフェリーが笛を吹かなかったのでプレーを続けたが、もちろんハンドはあった。しかし、喜びが損なわれることはない。僕らはW杯行きを決めた。苦しみの中でもぎ取ったものだからこそ、いっそうその価値は大きい」
試合後、長い間ギャラスと抱き合っていたことについてアンリは、「彼とは本当に長い付き合いだ。僕らは一緒に学校に行き、誕生日も一緒で、一緒にクレールフォンテーヌ(国立のユースアカデミー)で育成を受けた。僕ら二人で(決勝点を生んだ)アクションを再び築けたというのは、重要な瞬間だった。それは歴史に残る一瞬だった」と説明した。
この日、よくも悪くも勝負を分ける存在となったアンリは、南アフリカで来年、彼自身4度目のW杯を戦うことになる。
11/18
アイルランド代表のジョバンニ・トラパットーニ監督は、試合後に行われた会見で、アンリのハンドが見逃されことについて、「主審はアンリ自身に尋ねるべきだった」と述べた。
「主審は迷っていた。だから副審に尋ねたんだ。だが、アンリ自身に直接聞くべきだった。もし主審がアンリに直接聞いていたら、彼は正直に“手でボールを運んだ”ことを告白していただろう。主審が選手に直接問いただすことは、今までだってなかったわけではない」
同監督はさらに、皮肉を込めて国際サッカー連盟(以下、FIFA)への批判も口にした。
「FIFAはわれわれに“フェアプレー”と口を酸っぱくして言うが、彼ら自身がそれを実行しようとしていないではないか」
最後に同監督は、「アイルランドこそが南アフリカへ行くべきチームだった」と無念さをにじませつつも、最後はW杯に出場するフランスへエールを送った。
「アイルランドのすべての人たちが、このプレーオフを見たはずだ。もちろん、フランスのサポーターもね。確かに、フランスはダブリンでの第1戦ではいい試合をした。だが、2試合を戦い終えて、われわれこそが南アフリカへ行くべきチームだったと思う。とはいえ、フランスがW杯で大きな成功を収めることができるよう祈っている」
11/19
試合から一夜明けた19日、フランスメディアは一斉にアンリのハンドについて報じ、「“神の手”がフランスをW杯に導いた」と書きたてた。
『レキップ』紙は「延長戦の末、ハンドによって生まれたゴールがわれわれをW杯に導くという後味の悪い結果となった。“レ・ブルー”(フランス代表の愛称)は、この2時間にわたる戦いを教訓に、もっと謙虚な気持ちでW杯に臨む必要があることを知るべきだ。われわれの代表は偉大なチームと呼ぶには程遠い」と酷評した。
また『ル・パリジャン』紙も、「選手たちは信じられないほどに無気力で、2回以上続けてパスを回す能力すらない。フランス代表にとって悪夢となったユーロ2008以上に、2010年のW杯はつらいものになると言っても過言ではないだろう。なぜならW杯には、イタリア、ドイツ、スペイン、ブラジル、イングランド、アルゼンチン、オランダ、ポルトガルといった強豪がそろっているのだ」と代表に警告を発した。
さらに『ル・フィガロ』紙に至っては、「フランス代表はW杯に行く資格すらない。W杯のような栄誉ある大会に出場するためには、チームとして濃密さと冷静さを備えなくてはならない」と辛らつにつづっており、自国のW杯出場に厳しい批判が飛び交った。
11/19
アイルランド代表の主将ロビー・キーンは、その怒りの矛先をヨーロッパサッカー連盟(以下、UEFA)のミッシェル・プラティニ会長、およびFIFAのジョゼフ・ブラッター会長に向けた。
英ラジオBBCの番組『ファイブ・ライブ』のインタビューに応じた同選手は、アイルランドが延長戦の末、アンリのハンドが原因でW杯出場を逃し、フランスが出場権を得たことについて、「両会長が満足しているに違いない」というコメントで皮肉たっぷりに不満をぶちまけた。
「おそらく、(フランスのW杯出場に)多くの人が拍手を送っていることだろう。プラティニもブラッターも、フランスがW杯に出場することになって満足感に浸り、携帯電話でメッセージでも送り合ったんじゃないか」
さらにロビー・キーンは、FIFAのプレーオフ抽選のやり方に対しても批判を口にした。
「プレーオフの抽選会にしたって、強豪同士が当たらないように配慮されている。ドイツだって、もう少しでプレーオフに出場していたかもしれないんだ。だが、抽選会が公平に行われない限り、これらの強豪同士がプレーオフで対戦することは100万年たったってあり得ないだろう」
11/19
アイルランドサッカー協会(以下、FAI)は「相手ゴールの際に主審の明らかなミスがあった」ことを理由に、FIFAに対し再試合の申し立てを行った。FAIは以下のような声明を発表している。
「今回の主審の誤った判定は、“スポーツは公明正大であるべき”との理念を大きく傷つけるものだ。従って、われわれはFIFAに対し、スポーツのフェアプレー精神を遵守するためにも、再試合を行うことをお願いする」
11/19
アイルランド代表のトラパットーニ監督は一夜明けた19日、拡大する騒動の沈静化に向け緊急会見に出席。「これは子供が学校でやるサッカーではない。審判がミスしたことで、ゲームは終わった。再試合が不可能なことは分かっているよ」と70歳のイタリア人の老将は、冷静にファンに語りかけた。
ただ、「取り除かなければならない多くの疑問がある。私はFIFAに行く。そして、彼らにアドバイスをするだろう」とビデオ判定導入など誤審防止検討の必要性を訴え、FIFAへの抗議は明確に行う意向も示した。
11/19-20「 “神の手”外交問題に?サルコジ氏“私は審判じゃない”」
アイルランドのコーエン首相は、この騒動に対し19日、フランスのサルコジ大統領との会談を希望。ちょうどベルギー・ブリュッセルで開かれていた欧州連合(EU)の特別首脳会議に出席していたサルコジ大統領も会談に応じることを決め、会議後の日本時間20日早朝に“直接対決”が実現した。
二人は表面上は穏やかだった。会談後に会見したサルコジ大統領は「今回のことをどれだけ申し訳ないと思っているか、コーエン首相に話した」と直接、謝罪したことを明かした。ただ、FAIが、06年W杯予選アジア5位決定戦で日本人主審の誤審でウズベキスタン−バーレーン戦が再試合となったことを例に挙げ、FIFAに再戦を要求していることには、「政治家の私は干渉しないことが正しいだろう」と言い切った。
収まらないのがコーエン首相だ。その後の会見で「この件はスポーツ組織が解決すべき」と政治の不介入を表明しながらも「われわれのスポーツ相と政府は不満を支持しFIFAに再試合を要求する文書を送る。フランス国民にも共感してもらえると思う」と宣言。サルコジ大統領も「気の毒だが、(再戦の)要望に応えることはできない」と返し、まさに“舌戦”ともいえる事態に発展してしまった。
たかがサッカー。されど、1969年のメキシコW杯予選では、中米のホンジュラスとエルサルバドルが出場権をかけて争い、「サッカー戦争」といわれる本当の戦争にまで発展した歴史もある。英ブックメーカーのウィリアムヒル社は、アイルランドへの賭け金を払い戻す意向を発表した。
11/20
アイルランド代表DFケヴィン・キルバーン(写真のゼッケン3)がコメントを発した。ロイター通信が報じた。
国内で第2戦のやり直しを求める声が上がるなか、キルバーンは現地のラジオ番組で「再試合があると思いたい。チームの誰もがそれを望んでいると思う」とコメント。「ピッチで彼(アンリ)に『ハンドだったのか?』と尋ねたら『そうだった。でもわざとじゃない』と答えが返ってきた。とはいえ、試合の映像を見たら、あれで僕らが意気消沈したのは明らかだ」と、ハンドが見逃されたときのショックを語っている。
また、ハンドのシーンについて「一目瞭然だったよ。試合が終わったあと審判のところに行って、事情を聞いた。ハンドが見えなかったのかと尋ねた。彼は『あれはハンドではなかったと100%断言できる』と言っていた」と、ピッチ上でのやり取りを明らかにしている。
11/20
仏紙『レキップ』とのインタビューに応じたフランス代表のレイモン・ドメネク監督は、今回の勝利が主審の判断ミスのおかげであることを認めつつも、アンリのプレーが故意に行われたものであるという見解をきっぱりと否定し、さらに、相手チームへの謝罪の必要性について疑問を投げかけた。
「ベンチからは、アンリがボールを手で扱ったところは確認できなかった。試合後にゴールの場面をビデオで見たが、主審の判断に誤りがあったようだ。いずれにしても、わたしには、試合ではよくある一場面にしか思われず、故意的な要素は全く見られない。われわれが謝罪せねばらなぬ理由も特に見つからない。9月9日に行われたセルビアとの一戦で、GKのウーゴ・ロリスが誤審により退場となったが、それに対して謝罪を述べた者など誰一人いなかった」
さらにドメネク監督は、「アイルランドのホームで行われた第1戦にわれわれは勝利(0-1)していたことを忘れないでほしい」と語り、フランスの本大会出場は妥当であるとの見解を示した。さらに同監督は、かつてのディエゴ・マラドーナの“神の手”によるゴールが賞賛されたことを引き合いに出し、今回の反応への戸惑いを口にした。
「この手の道徳主義は理解に苦しむ。アイルランドのやり切れない気持ちは理解できる。誤審で試合に敗れることがいかに不愉快であるかも承知しているつもりだ。事実、わたしがもしアイルランドの立場だったら、当然黙ってはいなかっただろう。いずれにしても、こういったことはサッカーではよく起こることだ。マラドーナが “神の手”でゴールを決めたときには、誰もが感嘆の声を上げていた。それが、どうして今回に限っては全く逆の反応になるんだ?」
最後にドメネク監督は、勝利への賞賛よりも、代表チームのふがいない戦いぶりに批判が集中していることを理解しつつも、今回の結果に罪悪感を持つべきではないことを強調した。
「チームは批判されているが、もう一度言わせてもらえれば、われわれはアウエーでの第1戦に勝利しているんだ。フランスを応援しているファンは、今回の勝利を喜んでいると信じている。もちろん、わたしだって今回の勝利にはいささか複雑な気持ちだよ。チームの出来が良くなかったことと、主審のミス、そしてメディアのネガティブな反応のおかげで、勝利の喜びが薄れてしまった。いずれにしても、責任の追求をするような論争には何の意味もない」
11/20
フランスの教育界の問題を問題視していることが分かった。ロイター通信が報じている。
同国教職員組合の「Snep-FSU」は、「フランス代表は、疑う余地のない不正の恩恵で南アフリカに行くことになった。これは、今日のフットボールの転落を如実に示している」との声明を発表。同組合はFFFに今回の件を糾弾すべきだとし、教師と生徒の間でこの件について議論する必要があると訴えた。
同組合はまた「Snepは、『スポーツで重要なのは勝つことだ』というドメネク監督および数選手のコメントへの非難と疑念を表する」と声明で述べている。
11/20
FIFAは、「ルールは審判の決定が最終的なものと明記している」として、再試合の実施は不可能との声明を発表し、FAIの提訴を却下した。
11/20
渦中のアンリは英国のテレビ局スカイスポーツ・ニュースのインタビューに応じ、「一番フェアな解決方法は再試合を行うことだろう」と、現在の正直な胸の内を語った。
「僕はペテン師じゃない。あの時、僕の手は無意識に動いてしまったんだ。ペナルティーエリア内にはたくさんの選手が密集していて、そこに速いボールが入ってきたんだ。僕は手でボールをコントロールしたのを否定したことは一度もなかったし、試合後には、アイルランドの選手にも、主審にも、メディアにだって正直に事実を話したんだ」
最後にアンリは、母国フランスがW杯本大会出場の切符をこのような形で手に入れたことに後ろめたさを感じていることを認めた。
「アイルランドにはとても気の毒だったと思っている。正直、彼らは勝利に値する試合をしていたと思う。当然、一番フェアな解決方法は再試合を行うことだろうが、残念ながらこれは僕が決められることではない。今の僕にできることは、『確かにあの時、ボールは手に当たった』と認めることくらいだ。アイルランドの選手には本当にすまないと思っている」
11/20
FIFAの裁定を不服とするFAIは、FIFAに対し再び「試合のやり直し」を上訴した。
また、問題の試合で誤審の当事者となったアンリの発言を受け、この日行われた同協会の理事会では、FFFに対しても、FIFAに対して共同で再試合を申請するよう協力を要請することが決定された。
「われわれはFFFに対し、両国の主将であるロビー・キーンとティエリ・アンリの連名でFIFAに再試合を申請することへの協力を求める。これは、世界中のスポーツ競技の公明正大さとフランス代表チームの誇りを守るために必要なことだ。FFFはこの件に関して『FIFAのいかなる決定にも従う』と明言したが、FIFAは、フランス代表主将の『再試合を行うのがフェア』との発言を重視してくれるであろう」
11/20
これを受けたFFFは夜遅くになって、次のような声明を出した。
「FIFAはすでに、FAIからの申し出に正式に回答している。この決断は絶対的なものであり、両国(フランス、アイルランド)ともにこれを受け入れられなくてはならない。またフランスは、誤審があったこと自体を否定しようとしたことはない」
11/20-21
FFFは20日、FAIによる再試合実現への協力要請を拒否した。再試合に関してはFIFAが20日の早い段階で退けていたが、その後に“神の手”で決勝点を演出したフランス代表FWアンリが「再試合が最も公平な解決手段」とする声明を発表。これを受けたFAIがFFFに連名でFIFAへ再要請を行おうとあらためて協力を求めたが、FFFは「(再試合を退けた)FIFAの決断は尊重されるべき」と回答。FAIも21日になって、正式に断念した。
FAIのディレーニー専務理事は「再戦のために最大限努力したが、残念ながら、FFFは私たちの要求に耳を傾けなかった。われわれの要請が受け入れられず残念だ。今回の件で、フェアプレーの精神は傷ついてしまった」と話した。 さらに「ばかげたことが繰り返されないように今後もFIFAに求めていく」と続けた。
アーセナル時代のアンリの恩師ベンゲル監督は「最大の問題は事実を目撃した何百万人が、見逃した一人(主審)を助けられないこと」とビデオ判定の導入を提唱。アンリの友人でもある男子テニスのフェデラーも「主審が見逃したのならシステムの欠陥。テニス以上に(ビデオが)必要なのでは」と同調した。またスウェーデン人のハンソン主審に関し、21日付の英紙デーリー・スターは同主審が10年W杯に参加できなくなる可能性が出てきたと報道。「起こったことは審判選考に影響が出る」とするFIFA関係者の談話を伝えた。
11/21
元フランス代表MFジネディーヌ・ジダン氏(37)が“神の手”騒動で渦中にあるアンリを擁護した。
21日にフランスのテレビ局に対し「彼はいかさま師ではない。私がミスしたように彼もミスを犯した」と発言。イタリアとの06年W杯決勝で退場処分を受けた自身と重ね合わせ「彼はこれを乗り越えるだろう」と続けた。アンリのハンドで試合に敗れたアイルランド側は21日に再試合を断念したが、首都ダブリンのフランス大使館ではファン200人が再試合を求めて抗議行動を行った。
11/22
アンリが22日、フランスのレキップ紙のロング・インタビューに応じた。翌日付の同紙に掲載されている。
これまでアンリの声明は英語で発表されてきた。母国語でフランスの国民に向けて心情を吐露するのは、“事件”後これがはじめてとなる。レキップ紙はかなり踏み込んだ質問をしており、アンリも誠実に答えようとしているのがうかがえる。
まず試合後から激動の4日間についてアンリは、「とてもつらかった。プレー中に生じた出来事から、とてつもなく問題が広がってしまった」と渦中に置かれた苦しみを語った。
試合終了とともにピッチにしゃがみ込んだリチャード・ダンの傍らに座り「すまない」と自分の思いを伝えたアンリだったが、フランス代表OBのエリック・カントナをはじめ、その行為を“偽善”ととらえる向きもあった。「あの謝罪は写真のためのポーズだったのか」と厳しい突っ込みを受けると、アンリはフーッとため息をつき「写真なんて関係ない」と反論、アーセナル時代の2001年にFAカップ決勝のリバプール戦でよく似た状況で敗れたことを振り返り、「だからアイルランドの選手たちの気持ちはよくわかる。謝罪をするのは当然だったし、彼も受け入れてくれた」と語る。
“偽善”との指摘は、問題のゴールの直後にアンリが喜びを爆発させたことからも生じた。これについては、「すべきことじゃなかった。でも正直に言うと、抑え切れなかった。(劣勢の試合で)苦しんだあとだったからね。このことは、ほんとうに後悔している。だからこそ、そのあとにアイルランドの選手たちひとりひとりに挨拶して回ったし、試合後も祝いはしなかった」と自分の非を認めている。
またゴールのすぐあとに、主審にハンドを自ら申告しなかったことについても、「そうできる状況になかった」と苦しみぬいて同点に追いついた直後だけに、冷静な判断ができなかったことを明かす。
試合から一夜明けるのも待たずして、アンリに対する批判はたちまち全世界に広がった。「ごく親しい人たち、連絡をくれた一部の人を除くと、誰の励ましも受けなかった。孤独を感じた。ほんとうに孤独だった」というアンリ。20日には「公正な解決は再試合」とする声明を出したが、それがFIFAがアイルランドの再戦要求を却下したあとだったことも、このインタビューで厳しく追及された。
そのタイミングについてアンリは、「弁護士と代理人(ともに英国人)と話し合って声明文を作成したが、同じ日にFIFAが裁定を下すことは知らなかった。僕は練習に出ていて、弁護士が文章を仕上げているところだった」と説明する。
代表引退を考えたというのはほんとうか、という質問には「ほんとうだ。金曜日(20日)、問題が大きくなったとき、かなりそんな気になっていた」と答える。「それに、(代表引退を考えたのは)これがはじめてじゃない。2006年のW杯が終わったあとも考えたけど、まだ早すぎると思い直した。ユーロ2008のあともそう。でも僕を必要としている世代がいると思って、辞められなかった。今回のことで、見捨てられたような気になったのはたしかだけど、僕から自分の国を見捨てる気はないんだ」と代表をつづける決意を固めた。
「僕はつねにフランス代表のために戦ってきた。たしかに今回は(代表引退が)頭をよぎることもあった。親しい人たちの励ましがなかったら、違う結論になっていたかもしれない。でもいまは心に決めた。つねに最後まで戦っていこうと。たとえ今回起こったことが、ずっと刻まれることになろうとね。人は過ちを許すことができる。でもすっかり忘れてしまうことはできないんだ」と語るアンリ。汚名が一生ついてまわることは本人も覚悟しているが、南アのピッチでそれを少しでもはね返せるような活躍に期待したい。
11/23
FIFAは23日、ブラッター会長がワールドカップ南アフリカ大会予選プレーオフでの出来事などを話し合うため、臨時理事会を招集したと発表した。12月2日にケープタウンで開かれる。
欧州予選プレーオフではフランス−アイルランドで、フランスがアンリの明らかなハンドの反則が見逃されたプレーから「決勝点」を挙げ、アイルランドが再試合を要求する事態に至った。FIFAは再試合を否定しているが、審判を増員する新ルールや要望の声が上がっているビデオ判定導入などについて話し合われる可能性がある。
けが人などが発生したアフリカ予選プレーオフのアルジェリア−エジプトや、欧州で発覚した200人が関与したとみられる大規模な八百長事件についても、討議されるもようだ。ケープタウンでは、12月4日に来年のW杯組み合わせ抽選会が行われる。
12/1 「アイルランド、今度は33枠目でのW杯出場要求」
サッカーのワールドカップ(W杯)欧州予選プレーオフで決勝点に絡むハンドが見落とされて敗退したアイルランドが、来夏の本大会に33番目の「特別枠」で出場を要請していることが30日、分かった。FIFAのブラッター会長が12月2日の臨時理事会で討議することをヨハネスブルクでの講演で明らかにした。
同会長は「どうなるか分からないが」と話しながらも2日のFIFA臨時理事会に諮る方針。関係者によれば、次回予選のシード権など“見返り”を得るための駆け引きという側面もあるようだ。臨時理事会はこれに関連し、W杯での補助審判員の導入も検討する。
12/1 「“神の手問題”FIFA会長がアンリを擁護」
アンリがハンドの反則を犯したとして批判されている問題で、FIFAのブラッター会長は29日付のフランスのレキップ紙でアンリが主審にハンドの反則を自己申告する責任はなかったとの趣旨の発言をした。同会長は「主審はゴールを認める前に、もっと時間をかけるべきだった」と述べた。
12/1 「アイルランド、W杯“特別枠”出場不可能」
FIFAのバルク事務局長は1日、ケープタウンで会見し、アイルランドが求めていた33番目の「特別枠」でのW杯出場について、「不可能だ」と明言した。
本大会には日本を含め32チームの出場が決定。同事務局長は「32チーム以上にW杯出場の希望をかなえることはできない」と述べた。
12/1 「“神の手”問題のフランス、部分的なビデオ判定の導入に賛成」
FFFのテクニカル・ディレクターを務めるジェラール・ウリエ氏は現地時間1日、サッカー界は部分的にビデオ判定を導入すべきだとの見解を示した。ロイター通信が報じている。
ウリエ氏は「ペナルティエリア内には問題がたくさんあり、ふたりの審判がゴール裏に増えれば、主審を助けることになるだろう。FIFAは考慮すべきだ」と、副審の数を増やすという提案に対して、賛成の意を示した。
一方で、ウリエ氏は「ゴールライン以外の部分でビデオ判定を導入するのは反対だ。(たとえば)フェロー諸島の試合で26台のカメラを用意することはできないし、主審に試合のジャッジを委ねなければいけない」とコメント。全般的にテクノロジーを導入することについては否定的な姿勢を見せている。
ただし、同氏は「だがアンリのハンドのようなケースでは、第4審判のためにモニターが用意されているべきだ。主審が確認できない、議論を呼びそうなシーンについては、第4審判に問うべきだろう」とも付け加えた。
12/3 「“神の手”影響?仏がシード落ちた」
FIFAは2日、W杯南アフリカ大会1次リーグ組み合わせの抽選方式を発表。過去のW杯実績などを考慮したこれまでのシード選定方式が、今年10月のFIFAランキングで決定(開催国の南アフリカを除く)と突然変更され、シードからフランスが外れた。日本を含むアジアは北中米、オセアニアと同じ第2ポットとなった。
最新FIFAランク7位のフランスがシードから外れ、ケープタウン市内の会見会場にどよめきが起きた。
前回大会では、W杯過去2大会の成績と過去3年のFIFAランクを数値化して、シードを決めた。今回は、今年10月のFIFAランクを基準に欧州の上位5位、南米の上位2位がシード入りするというものに突然、変更。フランスに代わって除外予定だったオランダがシード入りした。
“政治的判断”を感じさせる変更だった。フランスは11月の欧州予選プレーオフでFWアンリの“神の手”でアイルランドに勝利。アイルランド協会から再試合や33カヶ国目での追加枠要求などが出る問題に発展した。
FIFAのバルク事務局長は「今回のW杯予選の成績が、最も反映される方法にした。FIFAランキングは過去のW杯の結果も含めて計算されるので、評価対象の幅は狭くない」と説明。だが前日、「プレーオフの結果が左右する可能性がある」とFIFA関係者が示唆していたように、フランスにシード国との対戦を強いる形にすることで“一件落着”にしたとも考えられる。
日本とすれば、シード国に加え、過去5戦全敗のフランスか、C・ロナウド擁するポルトガルと同組になる確率は4分の1。ケープタウン入りしている岡田監督は「華のあるチームとやりたい」と話していたが、さすがに「シード+フランスかポルトガル」の“死の組”は避けたいはず。日本時間5日未明、指揮官も出席する抽選会で、運命の対戦国が決まる。
12/3 FIFA事務局長「フランスがシードされなかったのは罰則ではない」
2010年ワールドカップ南アフリカ大会のグループリーグ組み合わせ抽選会に先立って発表されたシード8ヶ国にフランスが含まれなかったことについて、ラジオ局RTLのインタビューに応じたFIFAのジェローム・バルケ事務局長は、「アイルランドとのW杯プレーオフで起きたハンド疑惑による罰則ではないか」との憶測をきっぱり否定した。
「今回の決定は、フランスに対する制裁でもなければ、アンリがアイルランドとのプレーオフで犯したハンドとも一切関係はない。なぜなら、今回のシード国は、プレーオフが行われる前のFIFA世界ランキングに基づいて決定されたからだ」
バルケ事務局長は、今回採用したシード国を決定するための基準が、2006年W杯ドイツ大会のものとは異なることを明らかにした。
「2006年のドイツ大会の時は、FIFA世界ランキングのほかに、1998年と2002年のW杯における成績も考慮された上でシード国が決定された。しかし今回は、2009年10月の時点でのFIFA世界ランキングのみが基準となった。というのも、われわれは、『各国の実力が最も正確に反映されているのがこの時期のランキングである』という結論に達したからだ」
今回、FIFAが参考にしたという10月のFIFA世界ランキングでは9位にいたフランスだったが、11月に行われた2010年W杯欧州予選プレーオフでアイルランドに勝利したためポイントが加算され、同月に発表されたランキングではシード圏内の7位に浮上していた。また、10月のランキングでは、本大会出場を逃したクロアチアが8位に入っていたため、9位のフランスがシード国に選ばれる可能性もあったが、最後の1枠は恒常的に開催国(南アフリカ)に与えられることになっており、最終的にフランスがシード国から脱落することとなった。
12/3 来年W杯は審判4人で実施 アイルランドは特別枠撤回
FIFAは2日、南アフリカのケープタウンで臨時理事会を開き、来年のワールドカップ南アフリカ大会では従来通りに主審1人と副審2人、第4の審判員の合計4人で各試合を担当することに決定した。
11月18日の欧州予選プレーオフのフランス−アイルランド第2戦で審判員がハンドの反則を見逃す誤審があり、ルール見直しの意見が出ていた。FIFAのブラッター会長は「審判員を増やしたり、機械技術を導入する必要性を議論し、今後も検討していくことで合意した。だが来年の大会は絶対に現行ルールで実施する」と断言した。
また、ブラッター会長はアイルランドが33番目の「特別枠」での出場要求を取り下げたことを明らかにし、ハンドの反則を犯したフランスのアンリに対し、出場停止などの処分を検討するためFIFA規律委員会が調査を開始することも明言した。
12/3 “神の手”アンリ、W杯本大会で出場停止も?
FIFAのブラッター会長は現地時間2日、アンリについて、規律委員会が調査を行なうことを明らかにした。同選手には本大会での出場停止などの処分が下される可能性がある。ロイター通信が報じた。
ブラッター会長は記者会見で、「規律委員会はアイルランド戦におけるアンリの振る舞いについて、調査を行なう。アンリだからという問題ではなく、明らかにアンフェアなプレーで、世界中が目にしているからだ」と語った。
ブラッター会長は「アンリが罰せられるとは言っていない。私が言っているのは、規律委員会が調査をするということだ」と付け加えているが、規律委員会には選手に処分を科す権限があり、同選手が本大会での出場停止処分を下される可能性もある。
また同会長は、W杯アフリカ予選におけるエジプトとアルジェリアの問題についても、規律委員会が調査を行なうことを明らかにしている。さらに、スポーツ界、特にサッカー界における違法賭博に関して、インターポール(国際刑事警察機構)がタスクフォースを設置することも明かした。
12/3 FIFA会長、アイルランドの提案を暴露したことを謝罪
FIFAのゼップ・ブラッター会長は現地時間2日、アイルランド側が2010年W杯に特別枠で出場したいと提案したことを、公の場で発表したことを謝罪した。IFAのチーフ・エグゼクティブを務めるジョン・デラニー氏は、しぶしぶながらこれを受け入れている。ロイター通信が報じた。
2010年W杯欧州予選プレーオフで、フランス代表FWティエリ・アンリのハンドから決勝点を奪われ、本大会出場を逃す形となったアイルランド。再試合を要求する同国サッカー連盟は、11月27日にFIFAで会合を行なっていた。そして今週、ブラッター会長は会合でアイルランドが「33番目の国」としての本大会出場を提案したことを公にした。
そんななか、デラニー氏はロイター通信の電話取材に対し、「ブラッター会長との会合は内密にされるべきことであり、公にすべきではなかったことを強調しておきたい」とコメント。「ブラッター会長の振る舞いには落胆している。彼は我々の国を侮辱した」と、同会長が特別枠の要求を公にしたことへの怒りを示した。
ブラッター会長は2日、アイルランド側に謝罪。だが、デラニー氏は「我々は謝罪を受け入れるしかない」としながらも、「彼のような立場の人間は、より適切な振る舞いをしなければいけない」と、ブラッター会長への不満を表している。
また、デラニー氏は特別枠の要請が「アイデアのひとつ」だったとし、「我々は再試合が正しい決定だと考えていた。正直に言って、我々がW杯に出られないことは分かっていた」とコメントしている。
そのうえでデラニー氏は「本大会に出られないのは残念だが、今回の失敗における最大の敗者はFIFAだ。彼らの評価は傷ついた。プレーオフにシード制を導入したこと、アンリのゴールが与えた印象、ブラッター会長の振る舞い……これらはひどくサッカーを傷つけた」と、FIFAを痛烈に批判。「我々はW杯を成功させる必要がある」としながらも、「今回の件はディエゴ・マラドーナのハンドと同じように、長く記憶に残ることだろう」と語った。
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初コメ、ありがとうございます。
その一言で、モチベーションが上がります。
フランス−アイルランドの一発中立国再試合は、第三者的に見てみたかったですねぇ。
ハンドはたくさん試合中にあるとしても、
故意であろうがなかろうが、あういう結果は
受け入れないといけないでしょう。
でも、アンリも言っているように
あれだけ騒動になっちゃって、
33カ国枠は無理だとしても
一発中立国再試合はしてあげても良かったと
思います。
そうすればフランスは負けると思うし・・・。
もし33ヶ国出場になったら、グループリーグ5ヶ国の組が出てくるのかなぁ。。
試合会場は? 日程は?
そう考えると現実的でないですよね。
ブラッター会長も、問題が問題なだけにリップサービスを多分にしている気がします。
IFAが断念して収束、と思っていたので今日はびっくりしました。
あり得ない発想ですよね。
アイルランドは負けたわけでもありませんが勝ったわけでもないのですからこれが認められると予選で負けてしまった他の国に申し訳ないと思うのですが。
まあ、シード権獲得が狙いなのでしょうが・・・。
ゴネ得が通るような事はないと思いますが、万が一何らかの優遇措置が適用なんて事にならなければ良いのですが。
レス遅くなりました。。。
別のエントリーで書きますが、
この問題でフランスは抽選会でシードを外れる可能性もあるとか。。
どうなることやら、ですね。
やっぱり、こういう重要な試合で誤審があると両チームとも勝っても負けても後味の悪い結果になってしまいますよね。
そして、ハンドを犯した選手に悪気がないだけに・・・。
FIFAに今後、どうにかして欲しい問題ですよね。
それにしてもアイルランドの監督は冷静でかっこいいですね。
初コメありがとうございます。
フランスのファンとしての喜びは理解できます。おめでとうございます。
ただここにはアイルランドのファンもいらっしゃいます。その方々にも敬意を払うコメントをお願いします。
厳しいレスですが、ご理解下さい。
フランス勝ったし〜(@^^)/~~~
まぁ、アイルランドドンマイ( ^)o(^ )
再試合やんね〜よっ<`〜´>