その前に各国国歌のウンチク話をお送りする。
A組 意外と荘厳な開催国。攻撃的で血なまぐさい&ァ
南アフリカ(South Africa/Sudáfrica)
開催国である南アフリカの国歌は、白人政権時代の旧国歌である「南アフリカの叫び」と、黒人解放歌でアパルトヘイトのテーマソング「神よ、アフリカを祝福したまえ」という2つの国歌を合体させたもの。公用語が11ヶ国語あるので、国歌にも一曲に4ヶ国語が入っている。 「国歌斉唱」(河出書房新社)の著者で国歌に造詣が深い新保信長氏は「民族融和の曲なのですが、会場がどういった雰囲気に包まれるのか必見です」と語る。
フランス(France/Francia)
一方、「われらの地に穢れた(けがれた)血の雨を降らせよう」という歌詞の内容が過激で血なまぐさい、としばしば改訂の物議を醸しているのはフランスの国歌。時代に合わない攻撃的内容と批判もある中、日本に留学するフランス人学生は「隣の国と戦争を始めたくなるくらい元気が出る曲!」と高評価。メロディはビートルズの「All You Need is Love」の前奏に使われていることから、世界的にも知名度が高い。前出の新保氏は「残虐な歌詞で有名なフランスは国内でも議論があり、移民問題との関連もあってか、ドイツ大会でのジダンは口を真一文字に結んで、全く歌っていませんでした」と語る。
メキシコ(Mexico/México)
メキシコは、「アイーン」にも似たなんとも独特なポーズで国歌を歌うことが定められている。選手とサポーターが同じ格好で、大声で歌う姿は圧巻である。国旗や国歌に関する法律も厳しく、ユニフォームに国旗を入れることすら禁止されているのだとか。
ウルグアイ(Uruguay/Uruguay)
5分以上とまるで歌劇のように長い国歌を持つのはウルグアイ。2009年、コスタリカとのW杯予選大陸間プレーオフでは、国歌斉唱中にコスタリカ選手が、しびれを切らしピッチに散り、アップを始めてしまったほど。
B組 前奏だけで1分も! 正式な歌詞は158番まで
アルゼンチン(Argentina/Argentina)
前述のウルグアイと同じく、アルゼンチンの国歌も尺が長いことで有名だ。前奏だけで約1分。しかも速度が途中で3度も変わるとあって、国歌としては複雑な構成。しかし、スペインから独立した中南米諸国ならではのオペレ風旋律は聞きごたえ抜群だ。「マラドーナ監督は天を仰いだりして、なんとも情熱的に歌っていますよ」と語るのは、98年にチリのサモラノ選手の熱唱を聞いて以来、サッカー×国歌の魅力にとりつかれてきたサッカーライターのいとうやまね氏。
韓国(Korea Republic/República de Corea)
韓国の国歌は、現在のメロディに決まる以前はスコットランド民謡「蛍の光」にのせられて歌われていた。作詞者は不明だが、歌詞の「東海(日本海)」など、美しい自然を歌っている。いとう氏も「個人的には韓国国歌はおすすめです。日本人の心の琴線に触れるヨナヌキメロディ≠ヘ東アジアの民族に愛される独特の音階。美しいメロディとリズムを一度聴いてほしいですね」と。徴兵制で兵役中のキム・ジョンウ選手は敬礼して国歌を歌う。ある韓国人ファンによれば「敬礼の角度で北か南か一発で見分けられる」とも。
ナイジェリア(Nigeria/Nigeria)
コンテストの応募作優秀5作品をドッキングさせた歌詞を持つのがナイジェリアだ。国旗も公募し、一般学生の作品が選ばれたというから、国民からの国旗・国歌の支持は高い。アフリカンバー「エソギエ」(東京・新宿三丁目」のナイジェリア人店主ラッキーさん(43)によると「子供の頃から毎日のように歌ってきました。直立不動で歌うのが正式で、代表選手のように胸に手を当てるのは格好悪い」
ギリシャ(Greece/Grecia)
正式な歌詞が158番まであるのはギリシャ。日本在住のギリシャ人は「158番までなんてもちろん歌えないよ。でも『先祖の死をもって自由を勝ちとった』というフレーズが好き。聴くと胸が熱くなる」と語る。
【引用】
SPA! 6月15日号「W杯出場32ヶ国の国歌がヤバい」
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